2009年11月13日

アンドロイドと妖精の話

アンドロイドは、もう出来ていました。
どこもかしこも、すっかり完成していました。
けれど、それは決して動きませんでした。
それには意思が見られなかったのです。

つまり肉体は活きていました。
筋肉も、それを支える骨も、覆う皮膚も、完璧でした。
その至るところを巡る血管も、それを流れる温かな血も、
それを押し出す心臓の鼓動も、きちんとしていました。
脳波さえ、まったく生きている通りの波形を描き、
どこを取っても、人間そっくりです。
あとは目覚めを待つばかりなのに、
アンドロイドが動きだす気配はありませんでした。

学者たちはそれぞれ頭を抱えて首を振りました。
誰もが 自分の受け持ったところに自信を持ち、
他の学者の技術を尊敬し、信頼しあっていました。
それだけに、自分の造った部分を何度も調べました。
アンドロイドに光線を当て、電気を流し、データを取ったり、
必要だと思えば”手術”をくりかえしました。
学者たちの信頼感は少しずつ薄れ、
それぞれの心の中に、不信感が芽生え始めました。
誰もが、他の誰かのデータを怪しく思い、
誰かがごまかしているのでは、と思うようになりました。
けれど、誰もその決定的根拠を見つけられないので、
不信感は、それぞれの心の中だけで、大きくなっていきました。
そしてますます自分の受け持ったところを疑うフリをして、
アンドロイドを切り裂き、縫い合わせ、
また切っては縫うことをくりかえし続けました。
終わりのない実験と”手術”にさらされながら、
アンドロイドはただ活きたままでした。

大きなものが、その様子を始めから見ていました。
計画の興りも、学者達の協力も、信頼も、
そして完成されたアンドロイドと、学者達の戸惑いも、
何もかも、ひとつのこらず、すべてを見ていました。
大きなものは、小さなものをアンドロイドのもとへ送りました。
静かな夜でした。
小さなものは、アンドロイドをみつめ、小さく光っていました。
その光に照らされて、傷付いたアンドロイドは、
やはりそこに在るだけでした。
かすかな薄明かりの中で、小さなものは、
アンドロイドとひとつになりました。

翌朝、研究室は大騒ぎでした。
アンドロイドが目を開き、口を動かし、声を発したのです。
そればかりではありません。
手も足も、首も肩も、アンドロイドはきちんと動かしたのです。
学者達は驚き、喜びにわきかえりました。
けれどそれも一瞬のことでした。
研究の成果を正しく調べ、失敗と成功の原因を探り、
何もかもを明らかにするために、学者達は目を輝かせ、
誰一人、アンドロイドの解剖に反対する者はありませんでした。

大きなものは、それも見ていました。
そしてアンドロイドが明日から受ける実験の数々と、
そのずっと先の解剖の日取りが決められるのも見ていました。
明日からの楽しみに



※未完か欠損か不明。欠損であれば後日補完。
posted by わたなべ かおる at 23:59| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

風の声 聞いたかい?

子供はいつも注意されていました。
ぼんやりと開いた口を閉じなさいと、
いつも母親や姉達が注意しました。
子供は注意されると口を閉じましたが、
気がつくと注意されていました。
それでもくちごたえせず、努力していました。
学校にあがるとき、一大決心をしました。
もう注意されないぞ、と心に決めました。
少し無口になりました。
でも塾はみんなと一緒なので、
ひとりではありませんでした。
夜遅くまでの勉強で、
視力も下がり、眼鏡をかけるようになると、
きちんと閉じた口によく似合って、
かしこく見えるようになりました。
実際よく勉強したので、
なかなかの成績をとっていました。
ある初夏の終業日のことでした。
子供は、通信簿をじっとのぞき込んでいました。
その数字は、急に落ちていたのです。
子供は、溜息をつきました。
でも帰らないわけにはいきません。
たとえ、この前のテストを見せた時のように、
こっぴどく叱られるとわかっていても、です。
子供は、もう一度大きく溜息をつくと、
通信簿をのぞき込みながら ついうろうろと
いつの間にか たどってきていた田舎道を、
舗装されてはいるけれど細い土手の道を、
家の方へ戻ろうと、向きを変えました。
その時、風が吹きました。
おちこんだ力ない子供の手から、
風はわけなく通信簿をまきあげました。
あわてて手をのばしましたが、
通信簿は舞いながら落ちてゆきました。
その下は、田んぼです。
子供は、またさらに怒られることに、
思わず目をつぶりました。
こわごわ目を開けると、
通信簿は、あやうく穂先にのっていました。
子供はホッとして、土手をおりました。
けれど、ふざけたように広い田んぼの央(なか)は、
あと少しのところで手が届きません。
また、風が吹きました。
「あっ…」
通信簿は、ゆっくりと、落ちました。
子供はそれを見ていました。
そしてそこには、軽い音もなく、
小さな波紋ができて広がりました。
水はきらきらと光りながら、
子供の目の中で ゆらゆら ゆれました。
波紋がとけてしまったあとも、
水はかすかなさざ波を立てて、
傾きかけた日の光をきらきらと踊らせました。
本当に、とてもきれいでした。
子供は見開いていた目をやがて切なく細め、
それにつれて口が閉じられました。
あわさった上唇と下唇の乾きに、
子供はハッとしました。
そのとき、風が吹きました。
それは幼い時、やはり同じように頬をなで、
風車を回していたのだと思い出しました。
そしてその風車を、ポカンと開いた口をして、
飽きることなくずっと眺めていた日々を───
子供は、風にふられて波紋を生んでいる、
黒い数字や文字の並んだ紙をじっと見ながら、
ぼんやりと呟いていました。
「…ただ…面白いものがたくさんあって…だから
 ただ…おどろきながら……本当に…きれい
 だった…から……」
子供の声は、少しずつ震え、
眉は切なげに目を細くさせました。
「…ただ…おどろいてた…だけなのに…誰も…
 だれ…も…───」
また風が吹いて、そっと波紋を描き、
子供の頬をなでてゆきました。
その変わらぬ優しさは、
まるで、自分だけはずっと知っていたと、
誰一人わかってくれなかった気持ちを、
自分すら気付けていなかった気持ちを、
ずっと知っていたよ、とささやいたようでした。
田んぼに落ちた紙もまた、
その並んだ記号の意味もなくして、
けれど 美しい波紋を織りなす
水上の舞のヒロインとなって、
風のエスコートを受けていました。
子供は口を閉じまいとして、
しばらくは何か言おうとしましたが、
結局はひとことも出せずに一文字を結び、
かみしめた奥歯につられて、
そのきらきらする瞳もつむりました。
言葉のかわりに、涙がこぼれて、
水の上に落ち加わると、
美しい波紋を、静かに広げました。
posted by わたなべ かおる at 23:57| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

絶望の淵に 〜望郷の果て〜

はじめに色はありました。
ほんとうに たくさんたくさん、色がありました。
あらゆるものが、色から生まれました。
はじめに 言の葉があったように、
色によってすべてがつくられました。

でも色は 色でした。
色そのものでは、触れられることも 見られることも、
まるで何ひとつ できませんでした。
色は あらゆる命を産みだしても、
ただ、色は ただ 色でしかありませんでした。

光が命であるように。
それは、言葉になり 優しさになり 温もりになり、
初めて人々に感じられることができる。
エネルギーのままでは、解られないから。
だから命は生まれかわる。

あらゆる生き物が、喜びの絶頂に、
ふと淋しさを感じ、涙するのは、
光という 色という ただひとつの命だった日を
その 記憶にない 刻みこまれた思い出を
自分の中で みつけるから

純粋に 命だった日々
私達は常に ひとつであり
また 共にあった
純血とひきかえに 肉体を得る
ただ 存在を知って欲しいあまりに
そのあまりあるエナジーの限界と共に 生まれる
posted by わたなべ かおる at 23:54| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

不完全な物語

書き尽くされなかった部分を補って、物語を紹介します。

彼女は、ずっと病気でした。
どこか特別な場所、例えば病院にいました。
カミソリの刃さえ、持つことを周りは許さなかったのです。
彼女は死を望んでいました。
もう生きていても意味がないと云いました。
生きているのが辛いとも云いました。
男は、彼女の望みを叶えようとします。
彼女は自分のせいで彼が罪を問われるのを心配します。
が、彼女を連れ出した彼は彼女の鼓膜に伝えます。
自分も彼女と同じだと云うのです。
彼女は望み通り、桜の樹の養分になります。
これは かじいもとじろうの短編のためです。
溶け終わるのを見守った彼に、追手がせまります。
たぶん彼女は2、3日で帰ると手紙を残していたのです。
彼は法に裁かれますが、どうしてか有罪になります。
誰も、彼自身と同じくそれを当然として動いたのです。
なぜなら、彼は生まれながらに罪人だから。
彼はミツバチのことを呟きますが誰も聞きません。
自分達の集めたミツを食べ尽くして集団自殺した話です。
原因は、生きる意味である女王の、突然の事故死です。
男は法により定められた罪人として死にます。
そうすることでしか死ねないからです。
またそれだけが男の意味です。
男は囚われの中で死ぬのです。
ただし彼の呟きのあとで、息をひきとります。
本当に望んできた裁きがくる───
それが最期の言葉です。

これで物語はすべてです。
ただし質問が残っています。
その質問は、難しいものです。
答えがあるか、またはないのです。
それ以上に、質問が難しいのです。
つまり質問しにくいのです。
もしかしたら、質問もないのです。

つまり、質問の存在はあなたしだいということです。
あなたがこの物語について考えます。
すると疑問が浮かびます。
それが質問なのですから。
あなたが考えない限り、質問は存在しません。
確かにあるはずの質問が、存在できないのです。
質問があるのは確かです。
それはこの物語の本質についてだからです。
この物語には本質があります。
けれどもしかしたらないのです。
すべては、あなたしだいということです。

この物語は本質のために書かれました。
つまり物語は本質の媒体なのです。
だから人物も出来事も本質に従っています。
本質を語るためのコマと現象だったのです。

これ以上は語れません。
テーマは生と死と生きる意味です。
答えは「わからない」です。
質問だけが欠けています。

本当は、いつまでも語っていたいのです。
posted by わたなべ かおる at 23:51| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

相反するふたつの

布団の中で、目をつぶりました。

自分の中に、ふたつの自分がいました。
風船でできた自分と、鉛でできた自分です。
風船の自分の中には淋しさがいっぱいつまっており、
鉛の自分の中は自分自身で満ちていました。
ふたつの自分は、とても丈夫なものでつながっていて、
とても深い水の中に沈んでいるようでした。
もっとも、今は深い水も、遠い昔には、あるいは
とても浅く 光をはじいていたかも、しれません。
ふたつの自分は、今は静かに沈んでいました。

水面がありました。
ふたつの自分は、そこにいました。
きっと風船の自分の内圧が、とても高くなったのです。
風船の自分の前には、同じような人たちがいました。
色や透明感や光りかたは、皆少しずつ違いました。
風船の自分は、自分のかげに隠れてのぞいている
鉛の自分を、みんなに少し紹介しました。
人々は興味を持ち、鉛の自分も少し笑いました。
けれど急に、ふたつの自分はバランスを変え、
再び重くなった鉛の自分を下に沈みました。

水の中、今はどこまで歩いても深い水ばかりです。
鉛の自分はたたずみ、風船の自分は揺れ、
またあるいは一緒に、歩いて浮かびました。
けれどもやはり、水はどこまでも深く、
ふたつの自分は水面と水中を行き来するばかりでした。

あるとき、とうとう、何のおかげか何のせいか、
ふたつの自分をつなぐものが、切れました。
それきり、意識は二度と戻りませんでした。
posted by わたなべ かおる at 23:47| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Ilusion

眼に、あまりにも繰り返し
縫い針が 刺さるものですから、
ふと、積極的になってみたのです。
今までは、いつだって首を振っては
針を突き放したのですが、
突き刺さるままにするだけでなく
息を吸うように、針を吸い込んでみたのです。

針は、はじめ暗く黒いところを、
ゆっくりと ぐにぐにしながら突き進みましたが、
ふいに体の方まで来て、
電気炊飯器の内ガマに似た、
細長いテフロン加工のところへ、
ポトン、と落ちました。

私はハッとして、
目を見開いたまま 息を呑みました。
今までのように、首を振り 針を振り払って
溜息という息を吐くのとは まるで違ってです。

私は、
自分がカラッポであることに、
初めて気が付きました。
涙が出ました。
そうして、幾万本もの縫い針で、
自分の内部を いっぱいにする姿を
思い描いて、それを願いました。
posted by わたなべ かおる at 23:44| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リアマキラ

人がたくさん躍起になったので、とうとうアンドロイドはできました。
どこもがみんな、生きている細胞で、
皮膚も骨も血液も、体中がきちんと生き返っている、
まぎれもない生命体でした。
それは医療用に開発されました。
つまり、人々は手術用の臓器提供体として、アンドロイドを開発したのです。
ですから、切り取った部分の回復は、
どんな生き物よりも早く、なめらかでした。

もちろん、アンドロイドに意識はありませんでした。
そのことは当然の優しさとして通っていましたが、
実際は人類への従順のためでした。
それでもアンドロイドは、こっそりと完成しました。
悪用されることを恐れたために、まだほんのわずかな人にしか知らされず、
アンドロイド自体も、たった一体きりでした。
外の見えない秘密の研究室で、
その夜、アンドロイドは初めて水槽から出されました。

水槽の中での実験は、すべて合格していました。
あとは空気中での実験だけでした。
問題はないという予測と、もうひとつの理由で、
あと一歩の成功を見守る学者はおらず、
研究室には最小限の技師が働くだけでした。
その数人の技師達に抱えられて、
アンドロイドは慎重に慎重に、
たくさんの最終検査装置のつながった
やわらかい安楽椅子へと移されました。

実験は予想されたとおり、すべて合格していきました。
何の問題もなくその日の作業を終え、技師達も、
呼吸器系や皮膚組織の空気中での経過を自動的にすべて記録するよう、
データ記録の機器をセットして帰りました。
研究室は完全防火防音であり、
万が一事故が起きた場合は、室内に被害を封じるシステムでした。
誰も必要以上にアンドロイドに関わらなかったのです。
それは規則であり、人々の感情でもありました。

アンドロイドは座っていました。
それを見ている存在がありました。
何者にも制約を受けないその小さな存在、
あるいは、限りなく大きな存在の一部は、
彼の不可思議な命に目を留めました。
悲しみをたたえ、救いをたづさえ、それは、
彼のもとへ、ふんわりと降りてきました。
ゆっくりと規則正しく繰り返されていた呼吸が大きくなると同時に、
彼は目を開きました。
目に見えない美しくやわらかい輝きが、
自分の前に微笑み、また自分を包んでいました。
涙腺が働き、大きく二度まばたきをすると、
口を開いて息を吸い、止めました。
ゆっくりと口を閉じながら少しずつ吐く息で、
その声帯がかすれた振動を起こしました。
「ーーriーーamーーmacーーkiーーlーaーー」
目に見えない優しい光は幸せそうに笑みを増し、
彼は遊び疲れた子供のように眠りに落ちました。
ゆっくりと首をたれてゆく胎児にも似た姿勢は、
彼の中に宿ったひとかけらを抱きかかえるようでした。

翌日、研究室は大騒ぎでした。
意識を持たないはずのアンドロイドが、
目を開き、深呼吸をしただけでなく、
どうやら発声までをも行なったというのです。
単調であるべき一晩のデータのたった一度、
ほんの数十秒の記録が、それを示していました。
そろって入室した数人の技師達は、
そのデータを読み取ると、学者に緊急連絡を入れるより早く、
すぐにアンドロイドに強力な全身麻酔を射ちました。
それは人々が最も恐れ、最も注意を払い、
決して起きてはいけないとしていた失敗への、
99.99%不必要な緊急対策でした。
数人の学者が全員、緊急集合しました。
この研究のために多くの頭脳が駆使されましたが、
大半の学者には、まだ先の研究として告げられ、
最終段階は、ごく少数の学者が知るだけだったのです。
緊急会議の議決は、即座に決まりました。
それは強力な全身麻酔の準備と同様、
この研究が開始したときから準備されていました。

人は不完全な状態で生まれてくる生物です。
学習によって、その心身は成長します。
アンドロイドの体は、完全な形で造られました。
それは切り取られ、移植されるためでした。
学者達はアンドロイドに意識が生じないよう、
決して学習の機会を与えませんでした。
それを厳密に守っていれば、いえ、
たとえ一度や二度学習の機会があったところで、
アンドロイドの脳には、体の機能を保つ以外、
言葉や感情を司る部分などなかったのです。
学者達の中には、これは大変な研究課題だと、
議決にやや反論する声もありましたが、
何にしても全身の回復が恐ろしく速いという、
移植のためのアンドロイド最大の特長が、
人類をおびやかす危機となった今、
アンドロイド完全末梢という議決は、
速やかに、確実に、決行されるべきでした。

その生命体を保つために駆け巡る人工血液を、
最後の一滴まで抜き去るために、
鋭く丈夫な剣山を置き、そのはるか上空、
格納部からの正確な落下が実施されました。
驚異的な回復力については未確認でしたが、
あらゆる技術を駆使したという確信から、
余程念入りに抹消するべきでした。
肉と骨のひとかたまりは、剣山と共に、
活火山の煮えたぎるマグマへと投下されました。

剣山に貫かれ、赤い水を流すそれを、
悲しさと苦しさで見守る存在がありました。
流れ出るその温かい水がつくる水たまりから、
ひとかけらの目に見えない光が顔を上げました。
少しずつ小さくなる生命体の鼓動に、
光はますます悲しみを帯び、激しく輝きました。
マグマの中に溶け入った物質と共に、
そのひとかけらの光も、一瞬の閃光を放ち、
限りなく大きな存在の中へと消えました。
posted by わたなべ かおる at 23:40| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

”サラマンドラ”の住みか

”孤独”が、生きていました。
”孤独”という生き物が、生きていました。
どんな人間も、飽きるほどその名を聞き、
けれど誰にも理解されず、
それは生きていました。
誰も”孤独”を理解できませんでした。
なぜなら、それが”孤独”だからです。
”孤独”は、孤独でした。

いつまでも、”孤独”は孤独で、
けれどほかになかったのです。
”孤独”が”孤独”であるためには、
誰にも理解されてはならなかったのです。
それが”孤独”の運命でした。

すべての命の中に、
たったひとつ、小さな点が、
底のない沼よりも深い
闇の蒼よりも濃い一点が、
すべての命の中に、
息づいています。

”孤独”は、孤独でした。
たったひとり、いつもひとりでした。
目を伏せたその命は、
いつもひとりでした。
それでも、”孤独”の生まれた地は、
その数えきれないすべての命は、
同じその一点を抱えた互いと生き、
いつか、その命を解き放つのです。

宇宙は眠っていました。夢でした。
すべてが幻であり、現実でした。
その最大の”孤独”は砕け散り、
こなごなになることで忘れようとしました。
けれど”孤独”はただ
多くの”孤独”を生むだけでした。
宇宙に生まれたすべての命は、
ひとつのこらず、その一点を
”孤独”という一点を抱いています。
そしてそれぞれに苦しむのです。
苦しんでいるのです。

すべての命の中で、
もとは同じひとつだった命が
そのひとつひとつが、
淋しいと叫び、
いつかは、土に還り、
風に散り、
空間は圧縮され、
そうして宇宙は再びひとつの
ただ一点に戻るのです。

互いの命の中にある”孤独”を、
わかってやれないのだと、
人間という知性は、気付きました。
その時から、本当の理解は生まれ、
また たぶん、
宇宙の収縮も、始まってしまったのです。

けれどひとつに戻れるのはまだ先のことですから、
放たれる前に、触れあってみましょう。
posted by わたなべ かおる at 23:36| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

まほうのゆびわ(三話組)

(第一話)
おねえちゃんは、とても きれいな手をして
いました。きれいな ながい ゆびに、
銀色の ゆびわを していました。
 それは、まほうの ゆびわです。
        (第一話 おわり)

(第二話 セリフ)
「ゆびわは、ゆびにまきついているけど、
 ほんとうは、世界が見える穴なの。
 その穴から
 世界が、とてもよくみえるのよ。
 美しくて優しい世界が みえるの。」
        (第二話 おわり)

指輪 指輪よ
女の指に食い込み
妻という座に縛りつける指輪よ
おまえの呪縛は
おまえが死ぬまで 解かれはしない
その珠玉を失い 金輪が傷付き
おまえが指輪としての命をなくせば
女共は おまえを自由にするだろう
        (第三話 おわり)



※第一話に欠損あり。後日補完予定。
(2009.11.15 原文より補完)
posted by わたなべ かおる at 23:33| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

小話 みっつ

  ≪会話≫

ごらん 赤い光が見えるだろう
あれが金の魚の目玉だよ

  どうして おめめだけ あんなに赤いの

だって 目玉まで金色になったら忘れてしまうだろう
はじめは赤い魚だったことを

  ぼくらと同じだね


  ≪手紙≫

前略 ついでに内容も略します
                 草々

  追伸 今夜も月はきれいです


  ≪恋文≫

あなたに 手紙なんて書けません
言葉はあまりにも がんじがらめに私を縛る
私の心は 文字になんて表せません

今すぐ ここにきてね
お返事は そのときに
posted by わたなべ かおる at 23:30| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

意識が見た夢 〜4種ノートを中心に〜 (収録案)

序 darknessノートへ

・地球の目
・小話 みっつ
 ※「しょうわ」と発音してください
・鳥のつばさ(音)
 ※「とりのつばさ おん」と読みます
・望郷の果て
・絶望の淵に 〜望郷の果て〜
・テレホン・ライン コードNo.0032-9
・まほうのゆびわ(三話組)
・存在のみ
・アンドロイドと妖精の話
・冬の子
・さかみち・coverd with the 'Black'
・幾万もの命が
・土葬 〜あるいは、宇宙への
・さんせい に はんたい
・歯車は
・Ilusion
・マンホールについて
・子供の国のアリス
・有利
 ※「ゆういん」と読んでください

終  五感、あるいはその先
posted by わたなべ かおる at 23:21| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

darkness創作全集 (収録案)

・本書について
・darkness創作について
・N.P.(ノンフィクション ポエム)について

---ある単純な物語達
・N.P.
・地球の目
・小話 みっつ
・N.P.
・鳥のつばさ(音)
・憂愁の章・序
・ものとも −ひとみ・含
・続 らしきもの
・N.P.
・窓辺の席 〜机の上の手記〜   (N.P.)
・もう一つの物語・タイ(対)
・望郷の果て
・絶望の淵に 〜望郷の果て〜
・テレホン・ライン コードNo.0032-9
・まほうのゆびわ(三話組)
・空を掴め
・自己命令「空を掴め」
・N.P.
・羊飼いと少年  (N.P.)
・夢についての夢語り
・存在のみ
・有利(ゆういん)
・(《darkness創作》−第二期ノート開始にあたって−)
・N.P.
・アンドロイドと妖精の話
posted by わたなべ かおる at 23:18| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

darkness創作・集 (収録案)

序  《darkness創作》

・風の声 聞いたかい?
・止めなければ
・リアマキラ
・十五進法の世界
・魂とひきかえに
・自己命令「空を掴め」
・おすすめの小箱
・かぎのあるはこ たち
・永い永い青春
・運命の相手に遭った話
・羊飼いと少年
・窓辺の席 〜机の上の手記〜
・もう一つの物語・タイ(対)
・今更ながらの説明。
・相反するふたつの
・”サラマンドラ”の住みか
・不完全な物語
・存在しえない物語

結  五感、あるいはその先
posted by わたなべ かおる at 23:14| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

水色クリアブック 内容一覧

darkness創作・集 (収録案)
darkness創作全集 (収録案)
意識が見た夢 〜4種ノートを中心に〜 (収録案)

「darkness創作全集」より「darkness創作について」
地球の目
小話 みっつ
まほうのゆびわ(三話組)
夢についての夢語り
”サラマンドラ”の住みか
リアマキラ
窓辺の席 〜机の上の手記〜
もうひとつの物語・タイ(対)
羊飼いと少年
Ilusion
相反するふたつの
不完全な物語
望郷の淵に 〜絶望の果て〜
風の声 聞いたかい?
魂とひきかえに
アンドロイドと妖精の話
止めなければ
運命の相手に遭った話
今更ながらの説明。
しめくくりの次の出来事


BN 「執行猶予つきの遺書」 企画書
後記 〜企画・編集について
BN 執行猶予つきの遺書 作品一覧(日付順)
「執行猶予つきの遺書」 もくじ

ある種族・外
(序文)
遺書にしちゃいけないけど
部分的な自殺
(神よどうか彼女を守り給え)
天へ請う
死の床に
火を盗んだうさぎの末路は
 I sho I shi sho Issho
遺書と意志書は一緒。
あなたがくれた機械
臣からの書簡
(死んでしまいたい/このまま 狂ってしまいたい)
肉体を離れる魂に問う
月と縁側と子供
神への反罪
死の予感・生の予感
ある種族・内
脱力へと向かう体で
(このまま/ちぢこまった心臓に)
(もし今死んだら/とても悲しい)
(おまへは何をそんなに泣いてゐるのだ)
受験なんて
夜中なら
死ぬまえにちょっと
決めた
決意について
一度きりの効力
とりあえず今は
逆説
文章反趨
そんな屋上をひとつくらいは



※茶ファイル&Dファイルと共通のものはアップせず
※「羊飼いと少年」は、バージョン違い
※「Ilusion」の「l」がひとつなのは故意
※BN「執行猶予つきの遺書」の公開については検討中(企画書のみか?)
posted by わたなべ かおる at 23:09| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

作業前の一言

遺作、と、呼んでいた。
すでに死した者達の言葉を、私はただ、預かっているだけの生存、と。

二度と言葉を並べられないだろうと思っていた。
二度と読み取ることなどできないだろうと思っていた。

今、これらの言葉を、
誰のものとして開くのか、定かではない。
されど。
ただ私は、当時指定されたままに、
外交係M-Wとしての働きを、進めているのだと思う。


青いクリアブックと同じ書体。
このプリントアウトの時期は限られている。
内容的にも、続きの作業を行った記録と推測される。
水色クリアブックを、ここに。

誰かの何かになることだけが。
我々の、決して叶わぬ、切実な望みだったのだから。
それがもし、今、叶うのなら。
ただ、あなたの中に、何かが残るのなら。



               T as M-W in Rey' Yusato
                 2009.11.13



(2009.11.18 訂正と補足)
「内容的にも、続きの作業を行った記録と推測される。」とあるが、
水色クリアファイルの内容は、青いクリアファイルの続きではない。
茶ファイル&Dファイルの続きである。

ただ、時系列として、茶ファイル&Dファイルが、まず作成され、
その後、青いクリアファイルを作成した際に、次なる作業として、
茶ファイル&Dファイルの補完を行った、という流れはあったと思われる。
posted by わたなべ かおる at 23:04| └ 文:水色クリアブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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